小中学生読書感想文コンクール

市長賞「夏の庭」を読んで

西ノ岡中学校 2年
藤木 志帆 さん

この物語は、ひょろひょろであだ名が「きゅうり」の木山、でぶで魚屋の息子の山下、めがねをかけていて感情的になると貧乏ゆすりをする河辺という三人組が、山下の祖母の死という出来事から、死へ興味をもつ。そこで近所の今にも死にそうな老人が独りで死ぬところを見届けようという河辺の提案により、老人を見張る所から夏の物語が始まる。この三人の発想に私はすごく「おもしろい」と思ったし、少し怖いと思った。

私が「死」ということに直面したのは、小学四年生の時の祖父の死だった。私はその時あまり実感がなかった。しかし、お棺の中に横たわった冷たい祖父と最後の別れの瞬間、急に涙が止まらなくなった。あの時の事は今でもはっきりと覚えている。死は、この前まで元気だった人が目の前から消えてしまう。まだ小四ではあったが言い知れぬ悲しみ、消失感でいっぱいになったのだ。

独り暮らしのおじいさんは、夏だというのにこたつに入り、一日中テレビを見ていて、三日に一度コンビニで弁当などを買う生活をしていた。

夏休みに入ると、三人組は毎日塾へ行く前におじいさんの家を覗いて、尾行をすることにした。私はこの老人がただ死ぬのをじっと待っているように思えた。同じことの繰り返しの毎日はおもしろくない。老人は独りだ。独りでは何もできない。死んでも誰も気づいてくれないし、悲しんでもくれない。こんなことを考えると、老人はとても淋しいのだと思った。

しかし、彼らとの交流によって老人は少しずつ変わっていく。また、三人組も変わっていく。

まず山下が店から持ってきた刺身をおじいさんに食べてもらおうとする。このことから老人は彼らに見張られていたことに気づいてしまう。最初は怒りでいっぱいだったが、まるで生きがいでも見つけたかのように毎日、買い物へ行くようにもなり、料理はするし、洗濯まで一人でせっせとこなし、アイロンがけもするようになる。私はこの老人が彼らに「俺はまだ死なないぞ」と見せつけているように思った。最初、死ぬのをただ待ち続けているおじいさんが、再び生きる楽しみを見出してどんどん元気になっていったのだ。彼らはまた逆に老人からロープの張り方、草むしりの後のスイカがおいしいことなどを教わる。

実は、この三人、木山、河辺、山下も複雑な家庭の事情を抱えて毎日生きていたのだった。おじいさんと彼らの間には不思議な友情が芽生えていったのだと思う。三人組はいつのまにか目的が変わり、おじいさんの家をきれいにしようとがんばるのだった。私もおじいさんの為に頑張ろうと奮闘していく彼らをいつのまにか応援しているのに気づいた。

特に印象に残ったのは、ゴミであふれた庭をきれいにして、コスモスの種を植えた場面だ。種をまいた庭にホースで水やりをすると、虹が現れたのである。私はこの本のタイトルでもあるきれいになった庭の虹が、三人とおじいさんの心の希望を象徴するように思った。この時にはもう、彼らはおじいさんを信頼、尊敬もし始めている。

やがて、戦地でお腹に子供のいる女性を殺してしまったこという過去が明らかになっていく。おじいさんは罪悪感か、終戦後は家族の元に戻らず、以来、独りで生きてきたのだ。戦争は人生をも狂わす。人には言えない心の傷をかかえ深い悲しい気持ちをたえてきたのだと思う。

その後の彼らの行動がすばらしかった。おじいさんの妻、古香弥生さんを探し出そうと、わざわざ電話帳で、居場所をつきとめようとしたのだ。電車とバスで二時間もかけて老人ホームに行くのは、すごく勇気がいることだと思った。彼らはただおじいさんの為になんとか弥生さんを会わせたかったのだと私は思う。

しかし、夏の終わりと共に三人とおじいさんとの永遠の別れが訪れる。特別な存在になっていたから、彼らは悲しかったと思う。でも、おじいさんの骨を見ながら木山は、不思議なほど静かで素直な気持ちに満たされた。木山が心の中で「ぼくもこれからがんばるよ」と話しかけたのには、すがすがしく思い感動した。

最後には、彼ら自身がそれぞれの家庭の事情を乗り越え、未来を強く生きていこうとするところで物語は終わる。死への興味から不純な動機で始めた体験は、おじいさんとの出会いにより、明らかに成長したと思う。この体験は一生、大人になっても忘れないと思う。おじいさんも、三人との出会いで幸せの中で死んでいったのではないだろうか。

現代の生活で、老人と子供の間には余り交流がない。私達にとって老人は人生の大先輩だ。私も身近にいるおじいちゃん、おばあちゃんともっと話してみたい。そしたらきっとたくさんの、私が今まで気づかなかったものを見出すことができるかもしれない。

読んだ本

読んだ本

作品名 『夏の庭-The friends』
作者 湯本 香樹実

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